内閣府SIPⅡ期フィジカル空間デジタルデータ処理基盤

内閣府SIPⅡ期フィジカル空間デジタルデータ処理基盤

期間 2018年度~2022年度
事業名 
内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期

フィジカル空間デジタルデータ処理基盤
マルチセンシングモジュール(MSM-PF)の開発

 仮想空間(サイバー空間)と現場(フィジカル空間)を容易に連携させることが出来る、エッジに重点をおいたプラットフォーム(以下「エッジPF」という)を開発し、社会実装することにより、フィジカル空間処理の開発・実装コストを大幅に削減し、特に我が国の中小・ベンチャー企業を含む産業界を活性化させることを目的として開発を進めました。
 DSPCではこの事業において、マルチセンシングモジュール・プラットフォーム(MSM-PF)を開発しました。
 多種多様なセンサーを同期測定し高度な解析をするセンサーフュージョンは、Society5.0に向けたIoTシステムに重要な技術ですが、カスタム開発のコストや労力が大きく普及の妨げになっています。そこで簡単にセンサーフュージョンを実現できることを目的として、複数のセンサーと制御回路とを一体化したMSM-PFを開発しました。
 これにより、中小企業やベンチャー企業でもセンサフュージョンに基づくIoTシステムが容易に活用できることが期待されています。

MSM-PF(マルチセンシングモジュール・プラットフォーム)

 低コスト・短期間開発が可能で、誰でも取り扱えるIoTセンサープラットフォームです。
 複数のセンサーをあたかもパソコンのプラグアンドプレイ機能のように簡単に扱えるようにし、IoTセンサープラットフォームの構築において専門家を必要としません。
 またサイバー空間(クラウド)とフィジカル空間(センサー)はシームレスに接続されており、特に意識することなくデータのやりとりをすることが可能です。

 センサーフュージョンができるエッジ端末、エンドポイント端末として、ユースケースとコストパフォーマンスによって使い分けが可能な3リファレンスモデル「松」「竹」「梅」を開発しました。もちろん同一プラットフォームで設計されているため例えば「松」から「竹」「梅」などモデル間の移行が容易です。

 クラウド機能(アナリティクスクラウド=MSMクラウド、My-IoT)とエッジ端末、エンドポイント端末との関係を下記に整理しました。データのやりとり、センサーの測定条件、エッジ端末へのプログラム配信など多機能かつ高機能ですが、専門的な知識がなくても取り扱うことができます。

 エッジプラットフォームの開発成果をわかりやすく動画にまとめました。

実証試験の事例紹介

 MSM-PF、エッジPFの効果を確認するために複数のポテンシャルユーザーとの実証実験を実施しました。

これらのうち代表2事例について紹介します。

AEセンサーによる冷間鍛造金型の異常検知

 冷間鍛造⾦型のトップメーカー、ニチダイ。⾼精度かつ⾼い強度を必要とする部品製造に⽋かせない、⾼品質な⾦型を製造する企業です。同⼀形状の部品を⼤量に⽣産出来る鍛造技術では⾦型に異常が発⽣すると、繰り返し不良品を量産してしまうため、金型の異常を早期に発見することが課題です。
 ⾦型が組み込まれる「ダイセット」に様々なセンサーを配置し分析を行いました。その数10箇所。⾦型から発⽣する微細な振動を拾うAEセンサー、温度センサー、動きを測定する変位センサー、荷重センサーなど、すべてのデータを時間同期を取って記録します。
 「各センサー情報を、時間同期を取れたデータとして収集することが凄く⼤事なんですね。こういう仕組みがMSM-PFであれば、簡単にできる。予知保全について知⾒を集めていく中で、壊れる前の予兆が取れるんじゃないかとか、製品の品質評価をできるんじゃないかとか、可能性を感じるようになりました。」

 「まだ始まったばかり。ただ、その先にきっちりゴールがあり、道がある。そこに新しい価値をいかに提供できるか挑戦すべきで、⾮常にやりがいも感じています。最終的には、業界巻き込んでといった話まで含めて考えていきたいなと思います。」

粉体ミキサー内の粉体混合度を振動センサーで数値化

 ⼤平洋機⼯はポンプ・ミキサー製品を国内外に販路を広げる産業⽤機械製造メーカー。粉体ミキシング混合度のデータ化に取り組んでいます。粉の混合度判定は、経験則による職人技が主流。センシングによって数値化することで粉体ミキサーに付加価値を付けられると考えたのです。
「粉が混ざっていくと、粉の硬さが変わって、⽻が粉を回す⼒が変わるので、振動に影響してくるのではないか。多数のセンサーをつなげられるので、とにかくつなげて解析をして、要らないものは、削っていくということができる。」
「実際にやってみたところ、粉の混合度によって振動の値に傾向が⾒られた。その分析をやっていけば、混合度のある程度の指針となるだろうというところまで、きております。DXに取り組んでいく中で、そういった製品を提供できるというのは、⼀つの付加価値として⼗分なものだと思ってます。」
「この⽬標が達成できれば、混合器を扱うメーカーの中で共通の基準が⾒いだせるかなと思っております。意外と結果がついてきていると。具現化は、決して夢で終わらないものかなと思ってます。」